心の状態診断プログラム

メンタルヘルスの問題解決を実現する画期的プログラム

ストレス社会の問題点と企業リスク

最近、首都圏や関西圏では、人身事故による鉄道の遅延・運転停止がよく発生しています。これら人身事故の多くは、昨今の景気停滞や複雑多様化する世相を反映した自殺によるものであることにお気づきの方も少なくないと思います。

自殺者数の推移

 日本の自殺者数の推移は1998年の32,863人以来、10年連続して3万人を超える状態が続いています。2003年には調査を開始した1978年以降最多の34,427人となり、2007年は33,093人で前年と比べ938人(2.9%)も増加し、過去2番目の自殺者数となっているのです。その数は交通事故死が1970年の16,765人をピークとして以降減少し続け、5,744人になった2007年での比較では、自殺者数は交通事故死の約5.8倍という異常な数となっています。
年齢別では、「60 歳以上」が12,107 人で全体の36.6 % を占め、次いで「50 歳代」( 7,046人、21.3% )、「40歳代」( 5,096人、15.4%)、「3 0歳代」( 4,767 人、14.4 % ) 。
職業別にみると、「無職者」が18,990 人で57.4%を占め、次いで「被雇用者・勤め人」( 9,154人、27.7%)、「自営業・家族従事者」( 3,278人、9.9% )、「学生・生徒等」(873人、2.6%)の順となっています。
原因・動機別では、原因・動機が明らかなもののうち、その原因・動機が、「健康問題」にあるものが14,684人で、次いで「経済・生活問題」( 7,318人)、「家庭問題」( 3,751人)、「勤務問題」( 2,207人)の順となってます(「平成1 9 年中における自殺の概要資料」 警察庁生活安全局地域課)が、自殺者の90%は亡くなった時に精神疾患相当の状態であり、その内訳は「うつ病」、「アルコール依存症」、「統合失調症」などでした(自殺予防総合対策センター)。アメリカの統計では、自殺者の中でもうつ病によるものが70%を占めているという報告もあります。

「産業人メンタルヘルス白書」によれば、心の病が増加していると感じる企業は調査以来増え続け、2006年の調査では6割だそうです(財団法人社会経済生産性本部調査)。民間企業の場合、社外的イメージや社内的モラール上、その実態が公表されることは稀ですが、2008年4月に人事院が発表した「2006年国家公務員の病休実態調査」によれば、うつ病など精神疾患を理由に1カ月以上休んだ職員が3849人と、1981年度の調査開始以来最多であると共に、原因別では全病休者中63.0%と圧倒的に多く、他の原因よる病休は減少している中で、精神疾患による病休者だけが2001年度実施の前回調査に比べ増加(1,631人)しているそうです。  同様に大阪府庁では2007年度に病気で連続7日以上休職した府職員のうち、鬱病(うつびょう)など精神疾患が原因の職員数は200人と、10年前の2倍、に達していると発表しています。

組織を蝕む「ストレス」と「うつ」の関係

まず「うつ」とは「憂鬱」の「鬱」のことです。ストレスや思いがけないことがあると、誰でも気分が沈み、活力がなくなり、意欲的に行動できなくなります。しかし、通常であればこれらの落ち込んだ気分は時間の経過と共に回復し、立ち直っていくものです。 しかし、気分の落ち込んだままの状態が長く続き、回復しない状態になるのが「うつ病」であり「うつ状態」なのです。そのメカニズムは複雑ですが、生物学的には脳内の神経伝達物質(セロトニンなど)の減少や活性不足も一因であるといわれています。

「うつ病」と「うつ状態」を明確に分ける症状間の差はなく、不眠、食欲不振、気分の落ち込み等のうつ症状の「量的」「質的」な程度が判断基準で、一定以上を「うつ病」、未満を「うつ状態」とすることが一般的に多いようです。ただ、「うつ状態」を伴う他の病気や薬物による影響もあるので、「うつ病」と確定するためには医師の診断が必要です。

状態の図式

 「うつ病」や「うつ状態」が恐いのは、その苦しさから逃れる為に自殺を考える(これを自殺念慮という)傾向が強い病気であることです。ある医師の経験によれば、患者の10%は自殺を試み、更にその10%は実際に命を絶ってしまったそうです。

これらのことからも、自殺の増加と「うつ病」や「うつ状態」の増加は相関関係にあることがお分かりいただけると思います。「うつ病」「うつ状態」は心理的刺激がストレスとなって起こることが多い病気で、これらのストレスが強く、長く続くと脳内の神経伝達物質に変調をきたし「うつ」となります(これを心因性と呼び、他には体質・遺伝が原因の内因性、脳や身体の病気が原因の身体性もあります)。
まさに現代社会はストレス社会とも言われているように、様々なストレスに覆われており、以前に比べて「うつ」が増えていることは当然であるのかもしれません。
ストレス社会の背景には、「成果主義的な評価制度による緊張感の増加」「景況感の悪化による目標達成の困難度の増加」「顧客による要求の高度化・複雑化」「人間関係の多様化・複雑化」「人員減少に伴う業務の増加による過重労働」「IT技術の進歩による働き方の変化、スピードアップ」などがあり、これらは多くの人にとってストレッサー(ストレスの元)となっています。
少し前の調査になりますが、ストレス反応と仕事上のストレッサーの中で最も相関係数の高いのは「今後の企業業績の展望」で、次が「現在の業績」であり、これらの結果、社員の「うつ症状」が強くなることが明らかになっています。(2003年5月の調査「仕事上のストレス要因とその対処資源」、第一生命経済研究所ライフデザイン研究本部)  これと同様な結果として、現在の仕事に疲労感やストレスを感じる原因として「会社の将来性に不安を感じる」が31.6%で第1位という調査結果もあります(「人口減少社会における人事戦略と職業意識に関する調査」2005年、独立行政法人労働政策研究・研修機構)。
サブプライムローンの破綻から始まった世界同時不況により、多くの企業業績が悪化し、更にここ数年はダウントレンドという中では、企業内におけるストレスは増え続け、「うつ社員」の増加とともに、その中から自殺者がでる可能性は日々高まっているといっても過言ではないでしょう。

ストレスが与える企業へのリスク

 「自殺対策基本法」という法律が2006年10月に制定されています。この中では、自殺者の対策は政府の責務であることを明記し、2007年5月には、2016年までに自殺者を20%減らすことを目標にした「自殺総合対策大綱案」が決定されています。こうした政府による自殺者対策が進む中、うつ病による自殺が労働災害であるという判決が相次いででています。2007年には20件弱の訴訟で、労災ではないという労働基準監督署の判断が地方裁判所で覆されました。その結果、企業には1億円前後の損害賠償が請求されているのです。過去の例を紐解いてみると、2000年に和解が成立した労災での和解金は、約1億7000万円というものもあるのです。

企業におけるリスクは訴訟というケースだけではありません。うつ病などで社員が長期休業をすれば、それだけ人件費はかかります。保険会社の試算では1人の社員がうつ病になると、年間でその人の年収の2倍程度のコストがかかるとも言われています。例えば年収1000万円の社員がうつ病になった場合。医療費負担は年間110万円程度。年収の6割と決められている法廷給付金と疾病手当、見舞金で約700万円。代替社員の人件費が1000万〜1500万円(派遣活用した場合)。医師とのやり取りなどのコストが20万円。合計で年間2000万円前後となります。中途退職となると退職金も必要になります。
さらに、最終的に自殺がおきて、労災認定で損害賠償や弁護士費用がこれに加算されると、心の病による企業の損失額は1人当たり2億円となるケースもあり得るのです。
こうした動向を背景に、例えばTISの子会社では推定で年間3000万円程度をかけて社員向け相談窓口部門を新設ました。NTTデータは臨床心理士が現場に出向き相談しやすくするための新組織を発足しています。この場合、人件費だけで年間1億円近くかけていると思われます。日産自動車ではストレスの原因をつぶさに分析するために、外部のサービス会社を使い、全社員に対するストレス・チェックを07年から始めました。その結果は各部署にフィードバックされ、原因となった要因の削減を目指し始めています。これに年間2億円前後の投資をしていると予測されています。

これらの企業の動きは特別なことではありません。自殺にいたるのは最悪の結果としても、日常的にはストレス増加に比例した「うつ社員」の増加により、業務効率の低下、ミスやロスの増加、遅刻・早退・欠勤・休職の増加による業務遅延、人間関係の悪化など、「組織が壊れる」ともいうべき状況が発生しています。
まさに「うつ病」「うつ状態」は大きな社会問題であるとともに、身近で切実な企業人事の問題として、対策に取り組む必要はありそうです。